月一コラム第二十一弾!令和3年8月号

 お盆も過ぎ、猛暑はなんとなく過ぎ去った感がありますが、新型コロナウイルス感染拡大は継続しており、いわゆる「第5波」もなかなか終わりが見えません。
 全国的には新型コロナ患者さんの自宅療養者数が10万人を超え、各地で「野戦病院」設立の動きも出てきています。私の身の回りでも、火曜日に発熱してその日に医療機関でPCR検査を受けて「新型コロナ陽性」と判定されたにも関わらず、土曜日になっても保健所から何の連絡もきていないという例があります。保健所から連絡がこないことには、医療機関は何の手出しもできないというのが今のルールです。なぜこれほどまで多くの新型コロナ患者さんが医療にたどり着くことができずに「ホテル放置」「自宅放置」となっているのか?このコラムを継続してお読みいただいていればお分かりかと思います(2021年1月の「月一コラム」をご覧ください)。

 

 2021年1月に「月一コラム」で私は以下のように述べました。

  • 最近、新型コロナ患者さんが自宅で亡くなる事例が報道されていますが、現在の「ホテル療養」「自宅療養」には医療が入ることができなくて、保健所が抱え込んでしまって「ホテル放置」「自宅放置」となっていることが最大の問題点なのです。
  • 「ホテル療養」「自宅療養」の患者さんの管理主体を「保健所」から「医師」に変えることで、重症化しそうな患者さんに早期に対応することができ、結果として重症患者さんを減らせる可能性が出てきます。
  • この「保健所」と「医師」の役割分担を進めるために必要なことのひとつが、新型コロナウイルス感染症を「指定感染症(2類相当)から外す」ことなのです。

 

 私が半年以上前から申し上げてきたことが、いまだに実現されておらず、結果的に現在の残念な状況(「ホテル放置」「自宅放置」)に繋がっているように思います。

 そこで、私は、この「保健所」と「医師」との役割分担を見直すことこそが喫緊の課題と考え、8月26日(木)の参議院厚生労働委員会においてもう一度、田村憲久厚生労働大臣をはじめとする厚生労働省に質問しました。

 

【梅村聡 質問①】現在、「自宅療養者」「ホテル療養者」の中で、医師の診察を受けて、カルテを作成されている人の割合はどれくらいだと厚生労働省は把握しているのか?

【厚生労働省 回答】把握していない。

【梅村聡 解説】日本国内では医師法24条で「医師は診療したときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録(カルテ)に記載しなければならない」とありますから、「把握していない」ということは「どのくらいの新型コロナ患者さんが療養中に診療(医療)を受けているか分からない」ということになります。おそらく9割以上の「自宅療養者」「ホテル療養者」の療養中の診療録(カルテ)は無い、すなわち診療(医療)を受けていないと思われます。

 

【梅村聡 質問②】仮に保健所が新型コロナ患者さんの「全例把握」「全例管理」しなくなれば、何が困るのか?

【田村厚労大臣 回答】

(1)入院勧告が出来なくなる。

(2)保健所が入院調整出来なくなる。

(3)新型コロナ患者さんに対して外出制限をかけられなくなる。

(4)在宅医療やオンライン診療が未整備なので、医療が介入するのは難しい。

(5)既に「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」にしているので、何となく医療者側に手が出しにくいという意識があるので、保健所が管理する方が良い。

【梅村聡 解説】

(1)入院したくても重症者しか入院できない現状をみれば、患者さんに「入院勧告」する場面は皆無なのでこの理由はすでに意味が無くなっています。

(2)新型コロナ患者さんには原則、担当医(主治医)をつけて、10日間しっかり管理してその分の診療報酬(医学管理料等)を設定し、カルテ(診療録)を作り、担当医と都道府県の入院フォローアップセンター(大阪府の場合)とで話し合うほうが保健所が入院調整をするよりもプロ同士で話が早いと思います。

(3)新型コロナ患者数が少ないときには効果があったかもしれないが、例えば70人の『PCR検査陽性コロナ患者さん』がいれば30人の『PCR陰性患者さん』がいてこの30人の方は自由に動き回る。無症候性患者さんも偶然にPCR検査で陽性と分からない限り自由に動き回る。そして一番感染力が強いと言われている発症前後2日間を過ぎてからの『PCR検査陽性患者さん』を中心に隔離している現在の対策は思っている程、感染拡大防止効果が無いと思います。

(4)これを理由に「新型コロナ患者さんの保健所管理を続ける」ことは厚生労働省としては無責任で、それならこれを機に一気に在宅医療やオンライン診療を整備する方に舵を切るべきです。また「未整備」だから難しいのではなく、保健所管理がやる気のある医療機関の介入を阻害しているという認識の方が正しいと思います。

(5)だからこそ「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」を止めて、「意識」を変えるべきだと思います。

 

 保健所に一例一例全てを届け出て、保健所の指示がないと医療機関も患者さんも動けないという現在のモデルには限界がきています。医療機関から保健所への届け出は数日に1回まとめて行えば良いかと思います。また保健所の指示がなくても「患者-医師」間の同意で診療を行えばそれで十分です。このことが新型コロナウイルス感染症を「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」から外して、例えば「5類程度相当(完全に5類にしなくても良いです)感染症」にすべき理由です。あくまでも私の勘ですが、厚生労働省は内心気づいているはずです。
 

梅村 聡