月一コラム第六弾!令和2年5月号
2020年5月15日(金)に約11年ぶりに参議院本会議で登壇質疑を行いました。テーマは「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」で、安倍内閣総理大臣、加藤厚生労働大臣に質問をさせていただきました。前回の参議院本会議登壇は2009年6月で、その時のテーマも今回と同じ「国民年金法等の一部を改正する法律案」でしたので、偶然とは面白いものです。
今回の改正法案では、「在職老齢年金制度」の見直しが行われることとなっています。「在職老齢年金制度」とは、60才を超えた会社員や公務員(以下、被用者)の方が、一定額以上の給与と年金をもらう場合に、もらえる年金額が減らされるシステムです。よく「年金を減らされない程度に、働き方を調節する」という60才以上の被用者の方がおられますが、その発言は、この「在職老齢年金制度」からきているのです。今回は、「年金が減らされはじめる給与と年金の合計額」が引き上げられるので、つまり、「60才以上の方がたくさん稼いでも、今までよりはもらえる年金額が減らされにくくなる」ので、私としては良い見直しだと思っています。しかし、60才以上の被用者が、一定以上の給与と年金をもらえば、年金額が減らされるという仕組みは残ったままです。私はこの「在職老齢年金制度」そのものを廃止すべきだと考えています。
廃止すべき理由の1つ目は、これから日本の労働人口が減少する中で、元気な高齢者にはどんどん働いてもらうことが、日本社会にとっては必要だからです。厚生労働省の調査では、60才~64才の被用者の約6割の方が「年金を減らされない程度に、働き方を調節する」と回答しています。つまりこの「在職老齢年金制度」を廃止することで、60才以上の方の労働力確保に繋がるのです。
廃止すべき2つ目の理由は、「契約(約束)違反」だからです。そもそも年金制度は「保険」です。皆さん、民間の年金保険に加入していて、いざもらうときになって「あなたは思った以上に稼いでいるので、年金額を減らします」と言われれば怒るのではないでしょうか?またこの「在職老齢年金制度」が適用されるのは会社員や公務員(被用者)だけで、自営業者やフリーランスの方がいくら多く稼いでも、もらえる国民年金の額を減らされることはありません。要するに不公平なのです。よく「たくさん稼いでいるのだから、もらえる年金額を減らして不公平をなくすべき」という論を展開する方もおられますが、それならたくさん稼いだ人には累進課税により、よりたくさんの税金を納めてもらうことで不公平を解消すべきなのです。契約(約束)した「年金制度(年金保険)」の中で、もらえるはずの年金額を減らして調整するのは、「契約(約束)違反」です。
このように、日本には、様々な矛盾に満ちた制度が存在しますが、先入観に惑わされることなく、時代に合った制度作りに、これからも尽力してまいります。